2015・アメリカ

監督・・・ニール・ブロムカンプ

キャスト・・・シャールト・コプリー、デーブ・パテール

21092033512_8f1a95498b_z.jpgSad to miss the @chappiemovie #castandcrew... | Flickr - Photo Sharing!


この作者は、今作を通して明らかに現代人にとって、重要な問題提起をしていると思います。非常に深い作品かと感じました。

表面上は、「第9地区」のロボット版的なSFアクションともとれますが、この「チャッピー」は更にテーマが深い。



前者は、アパルトヘイト等の人種差別問題を軸に描いてたみたいですが、今回は、人種差別もありますが、育児や虐待、人の育成環境が人生に与える影響の問題、最終的には人間の「自我」とは何ぞや?というディープな所にまでテーマを踏み入れている感じがします。

仏陀の思想や最新の脳科学で探求されて未だ解明されていない、人間の”意識”という難題に、A.I(人工知能)を搭載したロボットの物語を通して果敢に挑戦しているのではないかと思いました。

そういったものが見受けられるセリフが、特に前半にちょこちょこ出てきます。

まず、ポリスロボだった22号に、人工知能を埋め込むと、まさに人間の赤ん坊のような状態からスタートして、学習を進め、成長していく過程は、そのまま、我々人間の成長を物語っているという見せ方。

チャッピーが運悪く(良く?)街のゴロツキに教育をされてしまう筋書きは、人間が生まれてから体験する環境がその人の性格や人生までもを左右するとでも観客に訴えるような演出。
21075875106_ca307f6da0_z.jpgSad to miss the @chappiemovie #castandcrew... | Flickr - Photo Sharing!
成長が進むとやがて、自分で物事を判断できるようになり、生みの親”創造主”のデーブ・パテールに反発するようになる。人間でいう所の”反抗期”が訪れたりします。

序盤では、まさに人間の赤ん坊がひとつずつ言葉を覚えていく過程のチャッピーを可愛らしく描かれているので、あたかもスピルバーグ監督の「E.T.」や「A.I.」、または「グレムリン」のギズモを彷彿させるシークエンスですが、その奥には、「A.I.」から一歩踏み込んだ”意識”という内容に言及されています。




”自分を人間と思っているロボット”は、”死の概念”や恐れ、怒りなどの感情が芽生えてくる。それらはすべて”意識”があるからこそ発生する…。ポリスロボの22号の無感情な頃との明確な変化がわかります。

人間も、そもそも、脳神経細胞の各部位が発火して織りなしているコンピュータプログラムのようなものなので、冷静な科学的な見解(魂などの話を省けば)では、チャッピーと左程変わらない、語弊を恐れずに言えば”単なる機械みたいな存在”という皮肉めいた描き方と見て取れるのではないでしょうか。

「スラムドッグ$ミリオネア」でも素晴らしい演技力だった、デーブ・パテールを”創造主”と呼ばせ、「なぜ、途中で死ぬような体に作ったの?」と嘆くチャッピーとのやり取りで、ふと、我々人間も神様に不老不死ではない儚い存在として創られ、戸惑いの中で日々生きていく様をチャッピーを通して気づかされている気がしました...。




とまあ、そんな理屈は抜きにしても、今作の見所はやはり、ハリウッド最新VFX。チャッピーをはじめロボポリス軍団は、C-3POみたいなスーツアクター方式ではなく、モーションキャプチャー方式の全部CG。しかし、どう見ても本当のロボットにしか見えない質感は物語の説得力を増している。
第9地区」の”アーマードスーツ”で見せた迫力のあるアクションを更に予算的にもスケールアップした感じで見ごたえ十分でした。


独特のハンス・ジマーの緊迫感のある音楽とともに、地元ヨハネスブルクのヒップホップグループ”ダイ・アントワードの”ワイルド・スピードシリーズ”を彷彿させるヒップホップナンバーが映画の”ノリ”に一躍買っています。



そして、街のギャングでチャッピーの”パパ”と”ママ”である、ニンジャとヨーランディという同名役で(恐らくほぼ素のままで…?)出演もしてるのが、妙なリアリティが出てた要因でしょうか。

特にママ役のヨーランディが、ベッドで、童話「黒い羊と小鳥」を読み聞かせるシーンは何ともいいシーンです。

そんな、彼らに脇に追いやられた感が漂うシガニー・ウィーバーと、悪役も様になるヒュー・ジャックマンの豪華な顔ぶれがしっかり”脇”を固めているのも映画にゴージャス感が出てました。



終盤は”意識”をプログラミングと捉え”肉体”をそのハードウェアと捉える意識の入れ替えというぶっ飛んだ話に展開して、少々漫画チック過ぎな気がしましたが…。

しかし、日進月歩の現代の科学技術であれば、もしかしたら近い将来、ありえなくもない話なのかな?とも思います。
そんな気にさせる、ヨーランディ似のロボットでラストのオチがキマリでした。


最後に、ヨハネスブルク出身の監督にとって、本作や第9地区は、大林宣彦の尾道三部作のようなものでしょうか。本作でもチャッピーを演じる、ニール・ブロムカンプ監督の常連のシャールト・コプリーはさしずめ”尾美としのり”と言ったところか?








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